職員向け掲示・患者向け掲示を分けて考える!デザインの視点

医療機関の掲示物は、スタッフや患者さんに必要な情報を伝えるための重要なツールです。
しかし、「院内掲示を作ったけれど、あまり見てもらえていない」と感じたことはありませんか?

その原因の多くは、「誰に向けて伝えているのか」が曖昧になっていることにあります。
本記事では、職員向け掲示と患者向け掲示を分けて考えるデザインの視点を解説し、現場で伝わる掲示物を作るための具体的なポイントを紹介します。

なぜ「職員向け」と「患者向け」を分けて考える必要があるのか【原因の整理】

原因1:対象者の理解度と関心が異なる

職員向けの掲示は、医療専門用語や業務フローなどの内部情報を扱います。
一方で患者向け掲示は、一般の方でも直感的に理解できる言葉や図解が求められます。
両者を同じレイアウトで作ると、どちらにも伝わりにくい曖昧な内容になってしまいます。

原因2:掲示する目的が異なる

職員向けは業務の円滑化・安全管理・チーム共有が目的。
対して患者向けは安心感・信頼・理解促進が目的です。
目的が違えば、使う色・文字サイズ・トーンも異なるデザインが必要になります。

原因3:掲示場所と見る時間が違う

職員向け掲示はバックヤードやナースステーションなど、立ち止まって読むことを想定できます。
しかし患者向け掲示は、待合室や通路などで「ながら見」されることが多く、3秒で内容が理解できるデザインが理想です。

このように、職員と患者では伝える目的・環境・時間が全く違います。
だからこそ「分けて考える」ことが、見やすく伝わる掲示の第一歩です。

職員向け掲示と患者向け掲示の作り方の違い【解決策】

方法1:目的に合わせた情報整理をする

まず最初に、掲示の目的を明確にしましょう。

  • 職員向け:業務効率・安全管理・注意喚起(例:感染症対策、マニュアル更新)
  • 患者向け:安心・案内・行動喚起(例:マスク着用、予約方法の説明)

目的を分けることで、「伝えるべき情報の粒度」や「文章のトーン」が自然と整理されます。

方法2:色とフォントの使い分けで印象を変える

色やフォントは、見る人の心理に直接影響します。
職員向け掲示では、冷静で実務的な印象を与えるブルー系・グレー系の色が適しています。
患者向け掲示では、親しみや安心感を与えるパステルカラーやグリーン系を使うと効果的です。

  • 職員向け:明朝体・ゴシック体など、読みやすく情報密度が高い書体
  • 患者向け:丸ゴシック体やメイリオなど、やわらかく見やすい書体

方法3:構成を「読む前提」か「見る前提」かで設計する

職員向けは業務連絡や指示文など、文章中心の「読む前提」のデザイン。
一方、患者向けはイラストやアイコンで「見るだけで伝わる」構成が理想です。

例:

✖ 悪い例:
「来院時はマスク着用にご協力ください」だけの文字掲示

〇 良い例:
マスクを着けた人のイラスト+「マスク着用をお願いします」の短い文

方法4:掲示場所ごとにフォーマットを変える

掲示物は「貼る場所」によっても設計が異なります。
例えば、

  • 職員休憩室:A4サイズで詳細情報中心
  • 受付・待合室:A3サイズで見出し+図中心
  • 病棟内:短文+アイコンの組み合わせ

全てを同じテンプレートで作るのではなく、目的×場所で最適化することが大切です。

方法5:更新頻度とデザイン統一で信頼性を高める

掲示が古いままだと「情報が管理されていない」という印象を与えます。
月1回の更新や日付の明記で「今の情報」を伝えるようにしましょう。
また、院内掲示全体でロゴ・フォント・余白を統一すると、組織としての信頼感が格段に上がります。

これらの工夫を積み重ねることで、誰にでも伝わる掲示物へと進化します。

今日から始められる実践ステップ【行動支援】

【初級】掲示物を分類してみる

まずは院内に貼られている掲示を眺めてみましょう。
次のチェックリストで分類してみると、改善の方向が見えてきます。

  • この掲示は「誰向け」か明確になっている?
  • 読むための掲示?見るための掲示?
  • 最新の情報が反映されている?

【中級】掲示カテゴリごとにフォーマットを統一する

「職員向け掲示テンプレート」と「患者向け掲示テンプレート」を分けて作成します。
それぞれでタイトル位置・フォント・色・余白を統一すると、全体の整理がしやすくなります。

【上級】掲示内容をデジタルでも共有する

紙掲示だけでなく、電子掲示板・院内ポータル・LINE WORKSなどのデジタル連携も取り入れましょう。
更新が速く、職員がどこでも確認できる仕組みが整うと、業務効率も大きく向上します。

小さな改善の積み重ねが、院内の情報伝達をスムーズにし、患者との信頼構築にもつながります。

まとめ|対象を意識したデザインが伝わる掲示をつくる

  • 職員向けと患者向けは目的・内容・見せ方が異なる
  • 職員には業務的な正確さを、患者にはわかりやすさを重視
  • 掲示場所や見る時間も考慮して設計する
  • テンプレート化と定期更新で院内全体の印象を統一

掲示デザインは「伝える力」を高めるだけでなく、組織の信頼と安全文化を支える要素です。
あなたの施設でも、今日から少しずつ改善を始めてみてください。

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