「伝わらない」院内掲示の共通点と、すぐに改善できるポイント

医療機関では、患者さんや職員に向けた掲示物が日常的に貼り出されています。
しかし、「注意書きをしても見てもらえない」「ポスターが目立たない」と感じたことはありませんか?

実は、内容が悪いのではなく「デザインと構成のちょっとした工夫不足」が原因で、情報が伝わりにくくなっているケースが多いのです。
本記事では、「伝わらない掲示」に共通する3つの問題点と、それをすぐに改善できる実践ポイントを解説します。

なぜ「伝わらない」院内掲示が生まれるのか【原因の整理】

原因1:情報を詰め込みすぎている

医療機関では正確な情報を伝えることが求められるため、つい文字を多く入れすぎてしまう傾向があります。
しかし、人は1枚の紙から3〜5秒以内で「読むか読まないか」を判断します。
文字が多いと視線が分散し、肝心なポイントが伝わらないのです。

対策: 1枚に載せる内容は「1メッセージ1テーマ」が基本。詳細は別紙やQRコードに分けましょう。

原因2:フォントや色がバラバラで視線が迷う

タイトルや本文、注意文に異なるフォントや色を使いすぎると、情報の優先度がわからなくなります。
特に「赤・黄・青」を同時に使うと、かえって注意力が分散してしまいます。
結果として、「何を伝えたいのか」がぼやけてしまうのです。

対策: フォントは2種類以内、色は3色以内に統一。目的に応じた配色ルールを守ると読みやすくなります。

原因3:掲示位置やサイズが適切でない

掲示場所が視線より高すぎる、または通路の端に貼られていると、見てもらえる確率は一気に下がります。
また、文字サイズが小さいと2〜3m離れた位置では読めません。
見せ方の工夫よりも、見える位置・距離の設計が大切です。

対策: 掲示は視線の高さ(約150cm前後)に。タイトルは28〜36pt、本文は14〜18ptが目安です。

これら3つの原因を改善するだけで、掲示の「伝わる力」は格段に上がります。
次のセクションでは、実際にどう直せばよいかを具体的に見ていきましょう。

伝わる掲示に変える具体的な方法【解決策】

方法1:メッセージを「1枚=1テーマ」に絞る

掲示物の最大の目的は、「誰に・何を・どうしてほしいか」を瞬時に伝えることです。
複数の情報を1枚にまとめるのではなく、1枚につき1メッセージに絞りましょう。
たとえば「手洗いのお願い」と「マスク着用のお願い」は別にするほうが明確です。

ポイント: タイトルに動詞を入れると行動が促されます。
例:「手洗いを忘れずに!」、「検温にご協力ください」。

方法2:強調ポイントを明確にする

伝わる掲示は「どこを見てほしいか」が明確です。
WordやPowerPointで作る場合は、フォントサイズと色のコントラストで情報の階層を作りましょう。

  • タイトル:36pt・太字(強調色)
  • 本文:16〜18pt・黒または濃いグレー
  • 補足:14pt・グレー系で控えめに

強調は多すぎると効果が薄れます。1枚の中で最も伝えたい1箇所に絞りましょう。

方法3:フォントと配色を統一して信頼感を出す

医療現場では「清潔感」と「信頼性」が重要な印象要素です。
そのためには、シンプルなゴシック系フォント(例:メイリオ、游ゴシック)を基本にし、白地ベースに青や緑のアクセントを加えるのがおすすめです。

  • 注意喚起系:赤×白(緊急・危険)
  • お願い系:青×白(冷静・信頼)
  • 安全案内系:緑×白(安心・誘導)

これらの色使いを統一することで、職員にも患者にも「見慣れたルール」が生まれ、情報の理解が早まります。

方法4:見やすい配置と余白を意識する

情報を中央寄せで詰め込むよりも、上下左右に余白をとることで可読性が上がります。
文字と文字の間にも適度な行間を確保し、視線が自然に流れるデザインを意識しましょう。

レイアウトのコツは「タイトル→本文→補足→署名」の縦の流れを作ること
見出しを上部に固定するだけでも、視認性が格段に改善します。

このように、内容よりも「見せ方の整理」が伝わる掲示の第一歩です。
次の章では、今日からできる実践のステップを紹介します。

今日からできる実践ステップ【行動支援】

【初級】掲示チェックリストを使って見直す

  • 文字が詰まりすぎていないか?
  • タイトルが一目で読めるか?
  • 色が多すぎていないか?
  • 掲示の高さは目線にあるか?

まずは既存の掲示をこのリストで確認してみましょう。
小さな改善から始めることで、全体の印象が一気に変わります。

【中級】テンプレート化して統一ルールをつくる

一度整えた掲示フォーマットをテンプレート化し、職員全員が使えるようにすると効果的です。
タイトル位置・フォント・色などを統一すると、院内全体で「見やすい文化」が定着します。

【上級】デジタル掲示も併用する

紙掲示だけでなく、電子掲示板やモニターでのスライド表示を取り入れると、情報の更新が簡単になります。
WordやPowerPointで作ったデータをそのまま投影できるため、運用もスムーズです。

掲示は「作ること」よりも「伝わること」が目的です。
読み手の立場に立って、1つずつ改善を重ねていきましょう。

まとめ|院内掲示を伝わるデザインに変えるポイント

  • 1枚1テーマに絞る
  • フォントと色は統一する
  • 余白と配置を整えて読みやすくする
  • 掲示位置は視線の高さ
  • テンプレートで運用を標準化する

掲示物は、医療機関の「声」として患者さんや職員に届く重要なツールです。
小さな見直しでも、「伝わる掲示」に変えることは十分可能です。
まずは身近な1枚から、改善を始めてみましょう。

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