人口減少、少子高齢化。 こうした話題を耳にする機会は、ここ数年で一気に増えたのではないでしょうか。
医療業界においても、 「これからは人材確保がさらに難しくなる」 といった内容を、業界紙や病院経営の特集で目にされた方も多いと思います。
そうした情報に触れていると、 求人がうまくいかない理由を 「人手不足だから仕方がない」 と受け止めたくなるのも、自然な感覚と言えそうです。
実際、採用担当者として現場を見ていると、
- 募集を出しても応募が来ない
- 来ても条件が合わず辞退される
- ようやく採用できても定着しない
といった状況が続き、 「やはり人が足りないのでは」と感じている方も多いのではないでしょうか。
ただ最近、こうした感覚について 「本当に原因は、単純な人材不足なのだろうか」 と、立ち止まって考える必要が出てきているように思われます。
この記事では、すでに業界でも語られている社会的な変化を踏まえつつ、 まずは採用環境の基本構造を整理してみたいと思います。
「求人=人手不足」と感じてしまうのは、現場では自然なこと
採用担当者として日々対応していると、 「人が足りない」という感覚を持つのは、ごく自然なことではないでしょうか。
医療現場では、一人欠けるだけで業務負担が大きく変わります。 そのため、
「まずは人数を確保しなければ」
という意識が強くなるのも無理はありません。
ただ、この感覚は現場の実感として正しい一方で、 必ずしも採用が難しい原因そのものを示しているとは限らないようです。
労働人口は本当に減っていると言えるのでしょうか
「もう働き手がいない」という印象を持ちがちですが、 労働人口(実際に働いている人の数)を統計で見ると、 現時点で急激に減少している状況とは言えません。
たとえば、総務省の労働力調査では、 2024年時点の労働力人口は約6,950万人(前年より32万人増)とされています。
なぜ減っていないのか。 その背景には、 増加した内訳を見ると、男性は微減、女性が増加
- 女性の就業率の上昇
- 子育て後の再就業や共働き世帯の上昇
- 高齢者の就業延長
といった変化があります。
こうして見ると、 「人がいなくなった」というよりも、 人の働き方や動き方が変わってきた と捉えたほうが近いのではないでしょうか。
看護師の供給が一気に増えない背景
看護師全体の就業者数は、 2024年時点で約136万人と、増加傾向にあります。
ただ、供給の入口である看護師養成の現場に目を向けると、 少し違った景色が見えてきます。
看護学校の卒業者数は、 年間約5万8千人前後で推移しており、 大きく増えているとは言いにくい状況です。
定員割れや募集停止の話を耳にすることもあり、 「これから自然に応募が増えていく」と考えるのは、 少し楽観的かもしれません。
勤務先の多様化が、採用に与えている影響
採用が難しくなっている背景として、 多くの方が実感しているのが 「他にも選択肢が増えた」という変化ではないでしょうか。
実際、看護師の勤務先は、
- 病院・クリニック
- 介護施設・訪問看護
- 健診機関
- 企業の健康管理部門
などへと広がっています。
人数としては少なく見える分野でも、 流れているのは経験があり即戦力となる層です。
「以前より採りづらくなった」 と感じる背景には、 こうした分散構造がありそうです。
働き手のライフスタイル変化と、求人とのズレ
もう一つ、採用に影響しているのが 働き手側のライフスタイルの変化です。
共働き世帯が増え、 子育てによる一時的な離職後、 復職を考えるケースも一般的になりました。
その際に重視されやすいのが、
- 夜勤の有無
- 勤務時間の柔軟さ
- 家庭との両立イメージ
こうした視点は、 「働きたくない」という話ではなく、 「続けられる形で働きたい」という考え方と言えそうです。
ここまでを踏まえて、まず整理しておきたいこと
ここまでの話を整理すると、
- 労働人口は急激に減っているわけではない
- 本格的な人材不足のピークはまだ先
- 看護師の供給は大きく増えにくい
- 働き先と働き方が多様化している
といった状況が重なっていることが分かります。
採用が難しいのは、 「人がいないから」だけではなく、 社会の変化が求人情報に十分反映されていない という側面もありそうではないでしょうか。
次の記事では「伝え方」をどう考えていくか
ここまでで、採用環境そのものが 以前と大きく変わっていることを整理しました。
次に考えたいのは、 この変化を、求人情報や採用ページでどう伝えるかという点です。
次の記事では、
- 求人情報のどこで判断されているのか
- 伝わりにくい求人に共通するポイント
- 現場でも無理なくできる改善の考え方
を具体例とともに整理していきます。
条件を足す前に、 「どう伝わっているか」を見直すことが、 次の一手になるかもしれません。