Web制作やデザイン業務で、写真やイラストなどの素材を利用する機会は多いでしょう。
しかし、著作権や肖像権の扱いを誤ると、法的トラブルに発展することもあります。
SNSや自社サイト、チラシなどで素材を使う前に、どのような点に注意すべきか理解しておくことが重要です。
この記事では、素材利用時に必ず押さえておきたい著作権・肖像権の基本知識と、安全な使い方のポイントをわかりやすく解説します。
デザイナー・広報担当・クリニックや企業の担当者まで、誰にでも役立つ実践ガイドです。
なぜ著作権・肖像権を理解しないと危険なのか【背景とリスク】
原因1:ネット上の素材を「自由に使える」と思い込んでいる
インターネット上には、無料で使える素材サイトが数多く存在します。
しかし、「無料=自由に使ってよい」ではありません。
多くの素材には使用条件が定められており、たとえば「商用利用不可」「クレジット表記が必要」「改変禁止」などの制限があります。
利用規約を確認せずに使用すると、著作権侵害となる可能性があります。
原因2:著作権と肖像権の違いを混同している
よくある誤解が、著作権(創作物の権利)と肖像権(人物の権利)を混同することです。
例えば、街で撮影した写真を自社サイトで使う場合、写真の著作権は撮影者にありますが、写っている人物の肖像権にも注意しなければなりません。
無断で掲載すると、本人のプライバシーや人格権の侵害になることもあります。
原因3:AI生成画像の利用ルールが曖昧なまま
最近では、AIで生成した画像を素材として使うケースも増えています。
しかし、AI生成物には著作権が発生しない場合がある一方、学習元データの権利侵害リスクも存在します。
特に商用利用の場合は、使用しているAIサービスの利用規約(Adobe Firefly、Midjourney、Canvaなど)を確認し、商用利用が明示的に許可されているかを必ずチェックしましょう。
原因4:SNSやWebサイトの画像を“勝手に使う”行為
最も注意すべきなのが、他人のWebサイトやSNSに投稿されている画像を無断で利用することです。
これは著作権法で明確に禁止されており、たとえ個人のブログやSNSであっても「引用」ではなく「無断転載」に該当するケースがほとんどです。
例えば、次のような行為は絶対にNGです。
- InstagramやX(旧Twitter)に投稿された写真を保存して自社サイトやチラシに掲載する
- 他社サイトに掲載された商品画像をコピーして販売ページに使用する
- Google画像検索で見つけた写真をダウンロードしてブログに貼り付ける
これらはすべて著作権侵害に該当し、悪質な場合は損害賠償や刑事罰の対象となることもあります。
SNS上に公開されているからといって「誰でも使える」わけではありません。
素材を使う際は、必ず提供元が配布を許可している素材サイトや公式ライセンスを利用しましょう。
これらの誤解や認識不足が、意図せず法律違反につながることがあります。
次のセクションでは、素材利用時に守るべき著作権と肖像権の基本を整理していきましょう。
著作権・肖像権を正しく理解するための基本知識
方法1:著作権とは何かを理解する
著作権とは、創作した作品を保護するための権利です。写真、イラスト、音楽、文章など、人が創作したものはすべて著作物として保護されます。
著作権には次のような権利が含まれます。
- 複製権:無断でコピーする権利
- 公衆送信権:ネット上で公開する権利
- 翻案権:改変・加工して別作品にする権利
他人の著作物を利用する場合、著作者の許諾が原則として必要です。
「引用」や「著作権フリー素材」も、条件を満たしていないと侵害になる可能性があります。
方法2:肖像権の基本を押さえる
肖像権は、本人の承諾なく顔や姿を公開されない権利です。
モデルやタレントではない一般人でも、この権利は保護されています。
たとえば、患者さんや通行人が写り込んだ写真を院内ポスターやWebサイトに使用する場合、本人の同意が必要です。
特に医療機関・教育機関などでは、個人の尊厳やプライバシーを守る姿勢が信頼につながります。
素材として利用する際は、被写体の許可取得やぼかし加工などの対応を行いましょう。
方法3:ライセンスの種類を理解する
素材サイトでは、以下のようなライセンス表記がよく使われます。
- 商用利用可:営利目的の広告・サイトで使用可能
- 改変可:加工・編集・トリミングなどが許可されている
- クレジット表記必須:作者名や出典の明記が必要
- 非営利限定:ビジネス利用は不可
使用前に必ずライセンス条項を確認し、商用・非商用・改変可否の条件を理解しておくことが大切です。
トラブルを防ぐための素材利用チェックリスト
【基礎】素材を使う前に確認する5つのポイント
- ① 出典サイトの利用規約を読んだか
- ② 商用利用・改変が許可されているか
- ③ クレジット表記が必要か確認したか
- ④ 被写体に肖像権が発生していないか
- ⑤ 第三者のロゴや商品が写り込んでいないか
【応用】AI・ストック素材を使うときの注意点
AI生成画像やストックフォトを使う場合は、出典元のライセンスが商用利用に対応しているかを確認します。
例えば、Adobe FireflyやCanvaでは商用利用可能ですが、Midjourneyでは契約プランによって制限があります。
また、AI生成画像で著名人や既存作品に似た構図・顔が生成された場合は、肖像権・商標権の侵害リスクがあります。
【発展】自作素材でも注意が必要なケース
自分で撮影した写真や作成したデザインであっても、背景に他人の著作物(絵画、看板、キャラクターなど)が写り込むと問題となることがあります。
特に商用利用の場合は、第三者の権利物を含まない構図を意識することが重要です。
ここまでのチェックを習慣にすることで、素材利用におけるリスクを大幅に減らすことができます。
今日からできる安全な素材利用の実践ステップ
【初級】無料素材サイトの信頼性を見極める
- 公式運営(企業・行政など)のサイトを利用する
- 利用規約ページが明確に記載されているか確認
- 「再配布禁止」「第三者への転売不可」が明記されているかチェック
【中級】利用履歴を残す
使用した素材のURL・取得日・ライセンス情報をメモやスプレッドシートに記録しておくと安心です。
万が一問題が発生した場合でも、「どの素材を、どの条件で使用したか」を示せれば、トラブル回避につながります。
【上級】オリジナル素材を制作・管理する
長期的に見ると、自社で素材を制作・管理する体制を作るのが最も安全です。
社内撮影・AI生成・専門家への委託などを組み合わせて、オリジナル素材のストックを構築しましょう。
その際は、自社内で利用ルールを明文化し、デザイナー・広報担当全員で共有することが大切です。
まとめ|素材利用でトラブルを防ぐために覚えておきたいこと
- 著作権は「作品を作った人」の権利、肖像権は「写っている人」の権利
- 無料素材でも利用規約を必ず確認する
- WebサイトやSNSの画像を無断で使用するのは絶対にNG
- AI生成や自作素材でも第三者の権利侵害に注意する
- 使用履歴を残し、責任の所在を明確にする
素材利用のルールを正しく理解することは、トラブルを防ぐだけでなく、クリエイティブの信頼性を高める第一歩です。
安全な素材選びと正しい使い方を身につけて、安心してデザインや広報活動を進めていきましょう。